NAS DiskStationの導入 #26 空き容量の低下とボリュームの拡張 3

SynologyのDiskStationを2拠点で利用しています。この2台のDiskStationを使い、どちらかの拠点が災害にあってもデジタルデータを保持できるようにしています。このデバイスを使い始めて3年くらい経過しますが、空き容量低下の警告が表示されるようになりました。そこで、ボリュームの拡張を検討します。今回は「RAID1構成を維持したままの容量拡張」の「中編」です。

この投稿は、Synology NAS のDSMはバージョン 7.2.1-69057 Update 4 を利用して作成しています。DSM のバージョンが異なる場合は、画面や操作方法など説明の内容が一致しないことがあります。

2台のSynology NAS

SynologyのNASである以下のDiskStationを2拠点で利用しています。

NASデバイス: DS1520+ (5 bay NAS)
HDD: Seagate IronWolf Pro 8TB x 2

2台のNASは、同じ機種でSynology NAS のDS1520+でHDDベイが5個あるモデルです。

2台のNASデバイスは、それぞれ8TBのHDDが2台の構成です。RAID1 (ミラーリング)で構成しているため、利用可能容量は16TBではなく、約8TBです。

250km以上離れた二つの拠点にこのDiskStationを1台づつ配置し、データを自動複製・同期し、どちらかの拠点が災害にあってもデジタルデータを保持できるようにしています。

Synology NAS から警告の通知

この2台のNASデバイスを使い始めて3年くらい経過します。

ある日、デバイスから「利用可能な容量低下」の警告の通知メールが届きました。

そこで、2台のNASのボリュームのサイズの拡張を計画しました。計画の詳細は以前の投稿を参照してください。

ボリュームのサイズの拡張の構成

以前の投稿で説明したように、ボリュームのサイズの拡張の後は以下の構成になります。

NAS1: 8TB HDD x 2 (RAID1) → 8TB HDD x 3 (RAID5)
NAS2: 8TB HDD x 2 (RAID1) → 16TB HDD x 2 (RAID1)

HDDの構成は、2台のNAS(以下それぞれNAS1とNAS2とする)で異なることになります。

NAS2は、2台の8TB HDDを2台の16TB HDDに入れ替えます。NAS1は、空きベイに1台の8TB HDDを追加します。このとき、NAS1に追加した8TB HDDは、NAS2で今まで使っていたHDDを再利用します。これにより、新規購入が必要なHDDは、2台の16TB HDDのみとなります。

ボリュームのサイズの拡張後は、NAS1とNAS2でRAIDの構成は異なりますが、利用可能な容量はともに約16TBとほぼ同じにできます。

Seagate IronWolf Pro 16TB ST16000NT001 x 2 (新規購入)
Seagate IronWolf Pro 8TB ST8000NE001 x 1   (再利用)

NAS2に使う2台の16TB HDDは、新規購入します。NAS1に使う1台の8TB HDDは、NAS2で使ていたものを再利用します。

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NAS2の容量拡張

RAID1(ミラーリング)は2台のHDDで構成しますが、実際に使用できる容量はHDD1台分です。

NAS2の拡張では、RAID1からRAID1へとRAID構成を変えずに、容量を拡張します。この容量拡張では、容量拡張前も容量拡張後も使用するHDDは2台です。そのため、使用するHDDをより大きなサイズのHDDに変更することにより、容量拡張を実現します。

容量拡張(RAID1 → RAID1)の手順

ストレージの容量を拡張するために、前回の投稿で説明した三つの方法のうち、二つ目の方法である以下の順番で作業します。

  1. 1台目の新しいHDD(16TB)を空きベイに追加する
  2. 追加した1台のHDD(16TB)を古いHDD(8TB)と「ドライブの交換」の設定をする
  3. ドライブの置き換え(データのコピー)が完了するまで待つ
  4. 自動的に無効化された古いHDD(8TB)を取り外す
  5. 2台目の新しいHDD(16TB)を空きベイに追加する
  6. 追加した残りの1台のHDD(16TB)を残りの古いHDD(8TB)と「ドライブの交換」の設定をする
  7. ドライブの置き換え(データのコピーとボリュームの拡張)が完了するまで待つ
  8. 自動的に無効化された古いHDD(8TB)を取り外す
  9. 完了

これらの手順を順番に説明します。

1. 1台目の新しいHDD(16TB)を空きベイに追加する

1台目の新しいHDD(16TB)を物理的にNASの空きドライブベイに接続します。ドライブベイに接続したHDDは、ストレージ マネージャの「HDD/SSD」タブで確認できます。

ディスク3として新しいHDDを追加した直後の状態(ストレージマネージャ – HDD/SSD)

上記の画面は、新しいHDDを追加した後の状態です。ディスク2とディスク4が拡張前のRAID1構成に使われている8TB HDDのドライブです。ディスク3が、追加した16TB HDDのドライブです。

ドライブの順番は、HDDを物理的にどのドライブベイに設置したかの違いだけであり、順番の違いは容量拡張に対してに影響ありません。

追加したHDD(16TB)であるディスク3は、「役割の割り当て」の項目には、何も書かれておらず(-)、「ストレージプール」としても、「Hot Spare」としても割り当てられていません。

2. 追加した1台のHDD(16TB)を古いHDD(8TB)と「ドライブの交換」の設定をする

ディスク3として新しいHDDを追加した直後の状態(ストレージマネージャ – HDD/SSD)

HDDを物理的に接続しただけでは、そのHDDは利用されません。接続したHDDをどの用途として使用するのかを決める必要があります。

HDDを追加した直後の「HDD/SSD」タブには、利用されているないドライブがあるため、上部に「利用可能なドライブの管理」ボタンが追加で表示されています。

この「利用可能なドライブの管理」ボタンをクリックすると、以下のような「利用可能なドライブの管理」ウィザード画面が起動します。

利用可能なドライブの管理(ストレージマネージャ – HDD/SSD)

このウィザードの画面で、追加したドライブの用途を選択します。用途は以下の5つから選択できます。

  • 既存のストレージプールの管理
    • ストレージ拡張用のドライブを追加する (RAID5のドライブを増やす)
    • ドライブの交換
    • RAID タイプを変更する (RAID1 → RAID5など)
    • Hot Spareとして割り当てる (障害が発生した時の予備ドライブとする)
  • 作成
    • ストレージ プールの作成

今回のような、既存の8TB HDDを新しい16TB HDDに交換することによるRAID1からRAID1への容量拡張では、「ドライブの交換」を選択します。

この画面の「ドライブの交換」ボタンをクリックします。すると、以下のような「ドライブを交換するストレージ プールを選択する」画面が開きます。

ドライブを交換するストレージ プールを選択する (1台目のドライブの交換)

現在、ストレージプールは一つしかないため、選択肢は一つのみです。

この画面で、置き換える既存のドライブ(8TB HDD)があるストレージプールを選択して、「次へ」ボタンをクリックします。すると、以下のような「削除するドライブを選択」画面が開きます。

削除するドライブを選択 (1台目のドライブの交換)

RAID1を構成している二つの8TB HDDが一覧されます。

この画面で、置き換える既存のドライブ(8TB HDD)を選択して、「次へ」ボタンをクリックします。今回の場合はどちらのドライブでもよいです。

すると、以下のような「追加するドライブを選択」画面が開きます。

追加するドライブを選択 (1台目のドライブの交換)

容量拡張のために追加したドライブ追加した16TB HDDが一覧されています。この画面で、追加したドライブ(16TB HDD)を選択して、「次へ」ボタンをクリックします。

すると、選択したディスクがSynology 製品互換性リストにリストされていないHDDの場合に、以下のような警告画面が表示されます。

Synology 製品互換性リストにリストされていないディスク (1台目のドライブの交換)

DS1520+のSynology 製品互換性リストのURLは以下です。

https://www.synology.com/ja-jp/compatibility?search_by=products&model=DS1520%2B&category=hdds_no_ssd_trim

今まで使用していたSeagate IronWolf Pro 8TB (ST8000NE001, NE世代) は、互換性リストに一覧されていました。しかし、その後継製品であるSeagate IronWolf Pro 16TB (ST16000NT001, NT世代)は掲載されていないので、警告が表示されてしまいます。

しかし、後継製品なので特に問題ないと考えています。そもそも Seagate の IronWolf Proシリーズの製品としては、NT世代に置き換わっているので、NE世代を入手することが困難です。

この画面で、「続行」ボタンをクリックします。すると、設定した内容の確認画面が表示されます。

設定の確認 (1台目のドライブの交換)

推定容量の部分が7447.44GBです。1台目のHDDの交換では、容量は変化ないことがわかります。

内容に問題がなければ「適用」ボタンをクリックします。

「新しく追加されたドライブ上のすべてのデータが消去されること」の最終確認画面が表示されます。

すべてのデータが消去されることの確認 (1台目のドライブの交換)

追加した新しいドライブのデータがすべて消去されるのは問題ありません。

この画面で、「OK」ボタンをクリックすると、「ドライブの交換」処理が始まります。

3. ドライブの置き換え(データのコピー)が完了するまで待つ

「ドライブの交換」の処理では、

  • 古いHDDから新しいHDDへのデータのコピー
  • コピーが終わった後に、古いHDDの無効化
  • ボリューム拡張が可能な場合は、ボリュームの拡張

までを自動的に行ってくれます。

RAID1の構成で提供できる最大サイズは、二つのHDDのうち、小さいほうのHDDのサイズとなります。

RAID1で構成されている一つのHDDを容量の大きいHDDに交換しただけだと、HDDの構成は、

  • 16TB HDD
  • 8TB HDD

です。

そのため、一つ目のHDDを交換しただけでは、RAID1構成の最大サイズは8TBのままなので、今回の「ドライブの交換」処理では、ボリューム拡張は実行されません。

「1台目のドライブの交換」を実行した直後の状態 (ストレージマネージャ – HDD/SSD)

「HDD/SSD」タブに表示されている新しく追加した16TB HDDであるディスク3の役割の割り当ては「-」から「ストレージ プール1」に変更され、ストレージプール1に組み込まれたことがわかります。

「ストレージ」タブを確認すると、ストレージプール1の状態として

「置き換えています…0.72% (残り時間 : 10 時間 18 分)」

と表示され、既存の8TB HDDから新しい16TB HDDへデータのコピーが開始したことがわかります。

「1台目のドライブの交換」を実行した直後の状態 (ストレージマネージャ – ストレージ)

また、ドライブ情報のところには、既存の8TB HDDが2台と新しい16TB HDDが一覧されていることがわかります。

この「置き換えています」の進捗が100%まで進むのを待ちます。

「1台目のドライブの交換」を実行して数時間経過した70.44%の状態 (ストレージマネージャ – ストレージ)

8TBのデータのコピーはかなり時間がかかります。上記は、数時間経過したときの状態ですが、

「置き換えています…70.44% (残り時間 : 4 時間 1 分)」

と表示されており、残り4時間もかかります。

「1台目のドライブの交換」を実行して、100%まで完了した状態 (ストレージマネージャ – ストレージ)

100%まで完了すると、置き換え対象となった既存の8TB HDDが自動的に無効化され、ストレージプール1のドライブ一覧に表示されなくなります。

4. 自動的に無効化された古いHDD(8TB)を取り外す

自動的な無効化が完了すると、「HDD/SSD」タブでは、下記の画面のように置き換え対象となった既存の8TB HDD (ディスク2)の「役割の割当」は無し(-)に変わり、ドライブ ステータスは「無効化済み」となります。

「1台目のドライブの交換」の実行が完了した状態 (ストレージマネージャ – HDD/SSD)

無効化されたディスク2をHDDベイから取り外します。取り外すと「HDD/SSD」タブのドライブ一覧に表示されなくなります。

無効化されたドライブを取り外した状態 (ストレージマネージャ – HDD/SSD)

5. 2台目の新しいHDD(16TB)を空きベイに追加する

この時点で、2台目の新しいHDD(16TB)がまだ入手できていない場合は、このままの状態でNASの運用を続けます。

2台めの新しいHDD(16TB)が入手済みであれば、引き続き残りの既存のHDD(8TB)も置き換えをします。

この続きの手順は次回の投稿で説明します。


今回の投稿では、NAS2側をRAID1の構成のままボリュームのサイズを拡張する手順の前半を説明しました。次回の投稿では、続きの後半を説明したいと思います。

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