ソフトウェア開発用としてDELL Precision 3660 Towerをメモリを最小構成で入手しました。メモリは後から入れ替える予定ででした。しかし、その増設メモリモジュールでトラブルが発生しました。その解決方法の投稿です。
DELL Precision 3660 Tower
ソフトウェア開発の用途にメーカー系Windows PCを購入するときは、近年はDELLのPrecisionシリーズのミニタワー型を購入しています。
去年(2022年)の秋に第13世代インテルCore CPUがリリースされたことのあり、Precisionの新調を考えました。
そこで、DELLのPrecisionシリーズのミニタワー型を調べたところ、2023年2月時点で第13世代インテルCore CPUに対応したものはまだありませんでした。あるのは、第12世代インテルCore CPUに対応したものまででした。
新調はしたかったので、今回は、第12世代インテルCore CPUに対応したミニタワー型である、Precision 3660シリーズにすることにしました。
DELL Precision 3660 Towerのベーススペック
Precision 3660のベーススペックをDELLのホームページから抜粋すると以下の通りです。
機能 | 仕様詳細 |
---|---|
CPU | 第 12 世代インテル® Core (Core™ i9-12900K から Core™ i3-12100) |
チップセット | W680 (DDR5 / DDR4 ECC support) |
メモリ | 4 x DIMMスロット︓ 最大128GB または最大4400MHz ECCおよび非ECC DDR5 最大速度︓4400MHz 最大容量︓128GB 最大メモリー速度は、各チャネルの次の構成によって異なります。 DIMM構成が対称でない場合は、最大速度が低下する可能性があります。 4400MHz︓1 DIMM-1R/2R 4000MHz︓2 DIMM-1R 3600MHz︓2 DIMM-2R 8GB、1 x 8GB、DDR5、4400MHz、非ECC 16GB、2 x 8GB、DDR5、4400MHz、非ECC、デュアルチャネル 32GB、2 x 16GB、DDR5、4400MHz、非ECC、デュアルチャネル 64GB、2 x 32GB、DDR5、4400MHz、非ECC、デュアルチャネル 32GB、4 x 8GB、DDR5、4000MHz、非ECC、デュアルチャネル 64GB、4 x 16GB、DDR5、4000MHz、非ECC、デュアルチャネル 128GB、4 x 32GB、DDR5、3600MHz、非ECC、デュアルチャネル 16GB、1 x 16GB、DDR5、4400MHz、ECC 32GB、2 x 16GB、DDR5、4400MHz、ECC、デュアルチャネル 64GB、2 x 32GB、DDR5、4400MHz、ECC、デュアルチャネル 64GB、4 x 16GB、DDR5、4000MHz、ECC、デュアルチャネル 128GB、4 x 32GB、DDR5、3600MHz、ECC、デュアルチャネル |
ストレージ | 最大構成でマザーボード上の3 x M.2 2280 PCIe NVMe SSDおよび3 x 3.5インチSATAまたは4 x 2.5インチSATA HDDをサポート 特定のストレージ構成で利用可能な前面アクセス可能な2.5インチSATAまたは3.5インチSATA HDD(ロック可能なドアとキー付き) インテル® Ready Mode™ テクノロジー対応 アクティブ冷却方式のDell Precision Ultra-Speedドライブで最大1台の追加PCI-E SSDを実装可能 RAID 0/1/5/10が利用可能 |
前面ポート | USB 3.2 Type-A Gen 1 (5GB)ポート USB 3.2 Type-A Gen 1 (5GB)ポート、PowerShare対応 USB 3.2 Type-C Gen 2 (10GB)ポート USB 3.2 Type-C Gen 2×2 (20GB)ポート、PowerShare対応 ユニバーサル オーディオ ポート SDカード スロット |
背面ポート | 2 x DisplayPort 1.4ポート 2 x USB 2.0 (480MB)ポート、SmartPower対応 2 x USB 3.2 Gen 2 (10GB)ポート 2 x USB 3.2 Type-C Gen 2 (10GB)ポート 音声ライン出力 RJ45 Ethernetポート、1GbE RJ45 Ethernetポート、2.5GbE(オプション) オプションのポート(VGA、HDMI 2.0、DP++ 1.4、Type-C DP-Altモード 対応) |
内部 (ポート、 スロット) | フル ハイトGen5 PCIe x16 スロット フル ハイトGen3 PCIe x4 スロット フル ハイトGen 4 PCIe x4 スロット M.2 2230スロット(Wi-FiおよびBluetoothカード用) 2 x M.2 2230 / 2280 PCIe Gen4スロット(NVMe SSD用) M.2 2280 PCIe Gen3スロット(NVMe SSD用) 5 x SATAポート(2.5 / 3.5インチHDD / ODD用) |
光学ドライブ | 8倍速DVD-ROM 9.5mm 光ディスク ドライブ 8倍速DVDスーパーマルチ 9.5 mm 光学ディスク ドライブ 接触型および非接触型サポート付き内蔵スマート カード リーダー(CAC / PIV) |
アドイン カード | シリアル ポート カード Thunderbolt 4 PCIeカード Zoom超高速カード WLAN外部アンテナAIC USB 4.0 Type-C PCIe AICカード インテル ギガビットEthernet 2.5GbE NIC PCIeカード |
接続オプション | Qualcomm ® WCN6856-DBS、2x2MIMO、3571Mbps、2.4GHz / 5GHz / 6GHz、Wi-Fi 6E (Wi-Fi 802.11ax)、Bluetooth 5.2(発売後に提供開始) インテル® AX211、2x2MIMO、2400Mbps、2.4GHz / 5GHz / 6GHz、Wi-Fi 6E (Wi-Fi 802.11ax)、Bluetooth 5.2 |
電源オプション | 300W内蔵電源供給ユニット、92%効率PSU、80 Plus Platinum 500W内蔵電源供給ユニット、92%効率PSU、80 Plus Platinum 1000W内蔵電源供給ユニット、92%効率PSU、80 Plus Platinum |
チップセットはIntel W680です。これはLGA1700に対応する“Alder Lake-S”をベースとしたエントリーワークステーション向けXeonに用いられるチップセットです。Intel Xeon CPU向けとはなっていますが、Intel Core CPUでも使えます。
エントリーワークステーション向けとなっていることもあり、高価であるため、あまりメジャーではないチップセットとなります。コンシューマー向けでは、インテル600シリーズのフラグシップ チップセットは、Intel Z690であるとの認識があります。しかし、Intel W680はさらにその上の仕様を持つチップセットとなります。簡単に行ってしまうと、Intel W680は、Intel Z690に対してECCメモリサポートを追加したものとなります。
チップセットとしてはCPUのオーバークロックやメモリのオーバークロックもIntel Z690と同様に利用できます。ただ、DELLのPrecisionとしては、オーバークロックはサポートしていません。
メモリは、DDR5に対応しています。この表から分かるようにDDR5では、メモリモジュールののランクや数で、動作速度が変わることがわかります。
NVMe SSD用のM.2スロットは3個あり、また、STATA端子も5個もあります。NVMe SSD用のM.2スロットは別に、Wi-Fi / Bluetooth用にM.2スロットもあります。電源も1000Wを選択すれば、グラフィックボードも選びません。拡張性は十分です。
前面と後面のポートとスロット
Precision 3660は、前面や後面のポートやスロットも充実しています。USB 3.2 Gen 2 (20Gbps)ポートが5つあり、USB 3.2 Gen 2×2 (20Gbps)ポートは一つあります。
1. 光学ドライブ(オプション)
2. 電源ボタン
3. オーディオマイク コンボ(3.5mm)ジャック
4. 2 x USB 3.2 Type-A Gen 1(5Gbps)
5. USB 3.2 Type-C Gen 2(10Gbps)(データのみ)
6. USB 3.2 Type-C Gen 2×2(20Gbps)(データのみ)
7. SDカード リーダー4.0
8. 音声出力(3.5mmジャック)
9. 2 x DP1.4++ HBR2
10. 2 x USB 3.2 Type-C Gen 2(10Gbps)
11. 2 x USB 3.2 Type-A Gen 2(10Gbps)
12. 2 x USB 2.0 Type-A(SmartPower対応)
13. LANポート(RJ45)1G イーサネットネットワーク
14. 電源コネクター
15. LEDインジケーター ライト
16. オプションのポート(VGA HD15、HDMI 2.0、DP++ 1.4 HBR3、USB Type-C(DP-AltモードDP 1.4 HBR2対応))
メモリ
Precision 3660がサポートしているメモリは、最速がDDR5-4400となります。チップセットがIntel W680なので、ECCメモリもサポートしています。ただし、DDR5-4400は、最速値であり、メモリモジュールのランクやメモリモジュール数によって、DDR5-4400からDDR5-3600までの動作速度となります。
メモリは64GBは欲しいのですが、DELLの純正メモリは非常に高いです。2023年2月時点での、Precision 3660本体購入時のメモリ価格は以下の通りとなっています。
メモリを8GBから64GBに変更すると約29万円増加となります。
後付け用のメモリ64GB (2 x 32GB, DDR5-4800)の相場は、価格コムによると、2023年2月26日時点で¥25,980~¥40,000程度です。このような大きな値段差であると純正メモリを購入する気にはなれません。もう一台、Precision 3660が購入できてしまうくらいの値段差があります。
そこで、最小メモリサイズである8GB (1 x 8GB)で購入して、購入後に64GB(2 x 32GB)に差し替えることにしました。
増設用に購入したメモリ1 (Micron)
本体の購入と同時に交換用メモリも購入しました。PC本体が納品される前に交換用メモリを購入したため、純正メモリモジュールのチップがどのチップベンダーのであるのかがわかりませんでした。
そこで、メモリ相性保証のあるCFDのメモリ W5U4800CM-32GS にしました。このメモリモジュールは、Micronのチップを使っていました。チップは両面実装で、32GBのメモリモジュール1枚あたり16チップで構成されています。
Precision 3660の純正メモリ (Samsung)
Precision 3660 PC本体が届いて、純正メモリを確認すると、メモリモジュールは、SAMSUNGのチップを使っていました。チップは片面実装で、8GBのメモリモジュール1枚あたり4チップで構成されています。
Precision 3660のメモリをMicronのチップを使たメモリモジュールに交換
早速、1x8GB構成の純正メモリモジュールから2x32GB構成のメモリモジュールにメモリを交換しました。DELLのPrecisionは、電源ケーブルを接続するとメモリなどのセルフチェックが始まります。しかし、メモリ交換後は、セルフチェックが正常に完了しません。電源ボタンのLEDが、オレンジ色と白色の点滅を繰り返します。念のため、メモリを純正モジュールに戻すと、セルフチェックは正常に完了します。
セルフチェック時の電源ボタンのLEDの点滅のパターンは、エラーコードを表しています。
購入したメモリに交換すると、具体的には電源ボタンのLEDがオレンジ色2回、白色5回の点滅を繰り返しています。DELLのPrecision 3660の場合は、PrecisionシリーズのDiag LEDおよびビープ音(2017年~現在)のエラーコード表となります。該当の部分(オレンジ色2回、白色5回の点滅)を抜粋すると以下となります。
状態 | 状態名 | 電源LED: オレンジ色の点滅 | オレンジで点滅のパターン | 問題の説明 | 推奨される処置 |
---|---|---|---|---|---|
S8 | メモリ | 2、5 | オレンジが2度点滅した後で短いとぎれ、白が5度の点滅、長いとぎれの繰り返し | 無効なメモリが取り付けられている | メモリサブシステムの設定アクティビティが進行中。認識されたメモリモジュールは適切だが、互換性がないか構成が無効と思われる。 トラブルシューティングをサポートできる場合は、メモリを装着し直し、問題のないことがわかっているメモリがあればそれと置き換えて、問題を絞り込みます。 問題が解決しない場合は、テクニカルサポートにお問い合わせください。 |
互換性がないメモリが取り付けられていることを表すエラーコードとなります。
純正メモリは、DDR5-4800 CL40 1.1V (Samsung)で、交換メモリはDDR5-4800 CL40 1.1V (Micron)で、メモリ規格的には同等です。にもかかわらず、互換性がないメモリとして判断されています。
Precision 3660とMicronのチップを使ったメモリモジュール
色々調べていると、Precision 3660には、Micronのチップを使ったメモリモジュールを利用できなかったという情報
を見つけました。
この情報によると、
- Precision 3660の純正メモリはSK hynixのチップを使ったメモリモジュールであった
- Micronのチップを使ったメモリモジュール(2 x 32GB)に変更したら動作しなかった
- そこで、SK hynixのチップを使ったメモリモジュール(2 x 32GB)に交換したら動作した。
です。
純正メモリのチップ(SK hynix)が、私の純正メモリのチップ(Samsung)と異なりますが、起きているトラブルはは同じです。
この動作した実績のあるメモリモジュールを購入することにしました。
増設用に購入したメモリ2 (SK hynix)
実際に購入したメモリは、ArkのARD5-U64G88HB-48B-Dです。チップは両面実装で32GBのメモリモジュール1枚あたり16チップで構成されているので、Micronのメモリモジュールと同じチップ構成です。異なるのは、チップのベンダーのみです。
Precision 3660のメモリをSK hynixのチップを使たメモリモジュールに交換
SK hynixのチップを使たメモリモジュールに交換すると、何事もなかったようにすんなり動作しました。
DELL Precision 3660の仕様の通り 2 x 32GB のメモリモジュールは、DDR5-4400 として動作しました。これで、64GBメモリのPrecision 3660の完成です。
まとめ
DELL Precision 3660には、Micronのチップを使ったメモリモジュールは、DDR5-4800であったとしても利用できません。
SK hynixのチップを使ったメモリモジュールを使いましょう。私のPrecision 3660の純正メモリがSamsungであったので、Samsungのチップを使ったメモリモジュールでも動作すると思われます。ただし、どのメモリであっても購入は自己責任でお願いします。心配なら相性保証・交換保証のある販売店で購入しましょう。
今回の投稿は、DELL Precision 3660でのメモリ増設に伴うトラブルについての報告でした。
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