無停電電源装置(UPS) #2 UPSの種類

無停電電源装置(UPS)の導入を検討しており、前回の投稿では、電力供給のトラブルについて確認しました。今回は、UPSの種類について調べてみました。

電源障害とUPS

前回の投稿で説明したように電源障害の種類は多くあります。UPSといえば停電から守るものと思われがちです。実際には、このようなさまざまな電源障害からコンピューターやネットワーク機器を守るためにもUPSが使われます。ただし、すべてのUPSが上記のすべての電源障害に対応できているわけではありません。UPSによっては、本当に停電だけのトラブルにしか対応できていないものもあります。

次に、UPSを理解するために、給電方式や出力電圧波形について確認します。

UPSの給電方式

UPSの給電方式には、常時インバーター給電方式、ラインインタラクティブ給電方式、常時商用給電方式などがあります。

上記の三つの中では、UPSからの出力精度は、 「常時商用給電方式 < ラインインタラクティブ方式 < 常時インバータ給電方式 」となります。

常時インバーター方式

この方式では、商用電源を整流器(コンバーター)で直流に変換し、二次電池を充電しながら常時商用電源に同期した交流を定電圧定周波数制御インバーターで発生させるものです(交流→直流→交流)。そのため、商用電源側からのノイズが出力側へ流れにくくなっています。

常にインバーターを経由して出力するため、原理的に商用電源停止時の切り替え変動が起こりません(切り替え時間がゼロです)。このような特徴を持つので、特に電圧低下や電力波形の乱れの許されない用途に用いられます。

この方式は、オンライン方式(常に回路が動作しているため)やダブルコンバージョン型(整流器とインバーターの変換を2度通るため)とも呼ばれます。

この方式は、装置が大掛かりになりがちで高価になるため、家庭用・事務用としては、使用されることが少ないです。

常時インバーター方式 (APCホームページより引用)

ラインインタラクティブ方式

通常はサージ保護回路、ノイズフィルターを通してサージ、ノイズを除去し出力します。入力波形検知することができ、フィルターで除去できない波形があるとバッテリ給電に切り替わります。
通常時は出力と充電に、バッテリ給電の際はDC→ACとしてインバーターを常に介しているため、バッテリへの切り替え時間は2〜10ミリ秒と短くなります。

また、ラインインタラクティブ方式のUPSは、自動電圧調整(AVR)機能を持っているものもあります。AVR機能を持っている場合は、不安定な電源環境においても自動的に電圧を調整し、バッテリを使用することなく適切な電圧が提供できます。調整可能な電圧範囲以上に変動した場合には、バッテリ運転に切り替わります。

ラインインタラクティブ方式 (APCホームページより引用)

常時商用給電方式

この方式は、オフライン スタンバイ方式ともいいます。

商用電源が正常なときは商用電源を負荷に供給しながら、商用電源を整流器で直流に変換し、二次電池を充電する方式です。商用電源が停止または周波数が乱れたとき、商用電源を切り離しインバーターから機器に供給します。バッテリへの切り替え時間は8〜10ミリ秒です。

通常時、商用電源をそのまま供給するだけでなく、サージ保護およびノイズフィルターを通して供給するものもあります。

常時インバーター給電方式と比較して、商用電源が正常なときはインバーターが動作しないか無負荷になり、インバーター回路の損失が小さくなる利点があります。その反面、商用電源停止時の切り替え変動がやや大きくなる欠点があります。

常時商用給電方式 (APCホームページより引用)

このことから、電圧低下や電力波形の乱れがある程度許される負荷機器に用いられることが多くなります。比較的安価であり、商用電源停止時に電源補償時間内に負荷機器を停止する装置と組み合わせて、端末機器用に分散配置されることも多いです。

給電方式と対応できる電力供給トラブルの対応表をAPCのホームページから引用し、下記に掲載します。

この表から分かるように、より高価な常時インバーター方式のUPSの方が、多くの電源供給トラブルに対応できることがわかります。

#電力供給トラブル常時商用給電方式ライン インタラクティブ方式常時インバータ方式電力供給トラブルの概要
1停電電力供給が停止すること
2サグ
(瞬低)
供給電圧が一時的に低下すること
(瞬低)
3サージ異常に高い電圧が瞬間的に入力に発生すること
4入力電圧低下供給電圧が低下すること
(サグよりも長い時間)
5入力電圧上昇供給電圧が上昇すること
(サージよりも長い時間)
6ノイズ
(高周波)
入力電圧波形に高い周波数成分が発生している状態
7ノイズ
(スパイク)
供給電圧に瞬間的に高周波のスパイクが発生している状態
8周波数変動入力周波数50Hz/60Hzが変動している状態
9高調波ひずみ入力電圧波形が高調波成分が含まれることによって歪んでしまっている状態
給電方式と対応できる電力供給トラブル(APCホームページより引用)

UPSの出力電圧波形

UPSの出力電圧波形は、機種によって違いがあります。

正弦波出力、矩形波出力、疑似正弦波などがあります。使用時に問題が発生ししにくいものは、正弦波出力のUPSとなります。疑似正弦波出力のUPSは、正弦波出力のUPSよりは劣りますが、矩形波出力のUPSよりは、使用時の問題は発生しにくいです。

正弦波電圧出力

正弦波電圧出力とは、UPSの出力電圧波形が、下記の図のように正弦波の波形のものです。

正弦波

この波形は、コンセントからの商用交流電源と同じ波形です。そのため、このタイプのUPSは幅広い機器で利用できます。

ただし、正弦波出力は制御が複雑で高コストになりやすいため、UPSの価格が高めになります。しかし、安定動作のためには、費用が許すなら、正弦波出力のUPSを選ぶとよいです。

矩形波出力

矩形波電圧出力とは、UPSの出力電圧波形が、下記の図のように矩形波の波形(青色)のものです。

矩形波

矩形波タイプは制御が比較的容易で低コストです。しかし、商用電源と波形が異なり、高調波でノイズが乗っているため、力率改善(PFC: power factor correction)回路搭載の電源を利用しているPCやNASなど、精度が求められる機器では利用できません。

実際に、デスクトップPCでは、力率改善(PFC)回路がついた電源が利用されている場合、矩形波出力のUPSでは、PCの電源回路が正常に動作しないことあるようです。この点は、オムロンの下記サイトが参考になります。

疑似正弦波出力

疑似正弦波電圧出力とは、UPSの出力電圧波形が、下記の図のように階段状の波形で、正弦波波形に近い波形のものです。正弦波の波形に近いですが、電圧の変化が階段状であるため、高調波を含みます。ただし、矩形波出力よりは出力に含まれれる高調波は少ないです。

疑似正弦波

このように、UPSといっても、給電方式や出力電圧波形は、個々のUPSの回路構成によって様々です。

100Vの家庭用・事務用向けであれば、「ラインインタラクティブ方式」「正弦波電圧出力」のUPSを選ぶとよいと思います。

以上、2回にわって、UPSの効果と種類に関する投稿でした。

“無停電電源装置(UPS) #2 UPSの種類” への1件の返信

コメントを残す