NAS DiskStationの導入 #23 メディアサーバー(DLNAサーバー) – DSM7にUPnPのパッチが適用される

以前の投稿でNAS DiskStaionのDiskStationマネージャーをDSM 6からDSM 7へアップグレードしたときに一部のDLNAクライアントからDSM 7のメディアサーバーが見えなくなったと報告しました。この件で進捗がありました。

Synology NASのDLNAサーバー(DMS)

Synology NASのDiskStation Manager (DSM)では、NASなので当然ファイル共有の機能があります。

しかし、DMS (DLNAサーバー)としてDNLAでメディアファイルを共有する方法は、標準のままではできません。アプリパッケージをインストールすることでコンテンツの配信が可能となります。

パッケージはSynologyが無料で用意しているものや、サードパーティーが有償で用意しているものがあります。

SynologyのNASであるDiskStation向けにSynologyが無償提供しているDMS (DLNAサーバー)は、Synology 「メディア サーバー」です。

Synology メディア サーバーは、写真、音楽、動画の3種類の配信に対応しています。ただし、著作権保護された録画番組には非対応です。

「メディアサーバー」のインストールは簡単です。

DSMの画面にログオンし、パッケージ センターを開きます。すべてのパッケージを表示した状態だと見つけにくいので、上部左側にあるカテゴリ「マルチメディア」を選択します。

Synologyの「メディアサーバー」が見つかるので、「インストール」ボタンをクリックします。すると、ほどなくしてインストールが完了します。

Synology メディア サーバー パッケージ

メディアサーバーをインストールしたら、

  • 「メディア サーバー」のセットアップ
  • コントロールパネルの「インデックス付けサービス」のセットアップ

が必要となります。

メディアサーバーの導入方法は、過去の投稿で紹介しています。

DiskStation Manager (DSM)とメディア サーバーのバージョン

DiskStation Manager 6 (DMS 6)のメディア サーバーでは、私が持っているすべてのDLNAクライアントで、DSM 6のメディアサーバーがDMS (DLNAサーバー)として見えていました。

しかし、DSMをバージョン6からバージョン7にアップグレードしたところ、一部のDLNAクライアントで、サーバー一覧の中にDMSのメディア サーバーが表示されなくなりました。

メディアサーバーのバージョンは、DSM 6ではバージョン1.8系で、DSM 7ではバージョン2.0系です。メディアサーバーのバージョンが2.0になったことで、DMSとしての挙動が変わりました。見えなくなったことについての詳しい内容は、過去の投稿を参照してください。

DSMのメディアサーバーが見えなくなったDLNAクライアント

一部のDLNAクライアントとは、ソニーのVGF-WA1NAS-C5です。

VGF-WA1

VGF-WA1は、ソニーのPCであるVAIOの商品カテゴリーからWi-Fiオーディオとして2007年2月に発売されていました。

NAS-C5

NAS-C5は、ソニーのシステムステレオの商品カテゴリーからワイヤレス プレーヤーとして2007年11月に発売されていました。

2007年の発売当時は、オーディオのDLNAクライアント機能を持つ専用デバイス(PC以外のもの)はこれくらいしかなかったと思います。2007年といえば、日本でAndroidやiPhoneなどのスマートフォンが発売される前です。

サポートに問い合わせてUPnPライブラリーの問題であることが発覚

DSM 6からDSM 7にアップグレードしたことで上記のDLNAクライアントからメディアサーバーが見えなくなりました。そこで、私がパケット等を解析して、原因を突き止めて、サポートに連絡しました。すると、サポートからは、Synology側で解析した結果、メディアサーバーの実装に使用しているライブラリーlibupnp (pupnp)の挙動が1.14.6で変わったことに起因していることがわかりました。このライブラリーが修正されないと改善されることはないとの連絡でした。

この内容も過去の投稿で説明しています。

libupnp (pupnp)の修正パッチ作成しプルリクエスト&マージされる

製品(Synology のDSM 7)で直してほしい私としては、ライブラリーlibupnp (pupnp)のパッチを作成して、プルリクエストを発行しました。すると、ほどなくしてマージされ、来バリーの新バージョンとしてリリースされました。

この内容も過去の投稿で説明しています。

libupnp (pupnp)が修正されたことをSynologyのサポートに連絡

Synologyのサポートに修正されたlibupnp (pupnp)ライブラリーがリリースされたことを連絡すると、新しいlibupnp (pupnp)を使ったお試し版のモジュールを作成してくれました。それを、私のSynologyのNASに適用してもらうと、DSM 7にアップグレードしたときに発生した問題は、発生しなくなり、上記のDLNAクライアントからもメディアサーバーが見えるようになりました。

この内容も過去の投稿で説明しています。

DSM 7のアップデートごとに修正モジュールを適用してもらう

Synologyが作成した修正モジュールを個別に適用してもらうことで、問題は発生しなくなりました。ただし、そのモジュールは、DSM 7のアップデートを適用すると、未適用に戻ってしまうという制限がありました。

DSM 7のアップデートの適用で、修正モジュールが未適用に戻ってしまった場合は、再度Synologyのサポートに連絡すると、修正モジュールを再適用してもらえました。

Synologyは、DiskStationのセキュリティ更新に熱心であるため、下記のように、定期的(1ヶ月間から2ヶ月間くらいの間隔)にDSM 7のアップデートをリリースしていました、

  • 2022年08月22日 Version: 7.1-42661 Update 4
  • 2022年09月27日 Version: 7.1.1-42962
  • 2022年09月22日 Version: 7.1.1-42962 Update 1
  • 2022年10月20日 Version: 7.1.1-42962 Update 2
  • 2022年12月08日 Version: 7.1.1-42962 Update 3
  • 2023年02月20日 Version: 7.1.1-42962 Update 4

これらのDSM 7のアップデートを適用した後は、その都度、修正モジュールの再適用をお願いしていました。

毎回、個別に修正モジュールの再適用をしてくれたSynologyにはとても感謝しています。

libupnp (pupnp)の修正版がDSM 7に取り込まれた

修正モジュールに進展がありました。

2023年04月12日にリリースされたVersion: 7.1.1-42962 Update 5において、libupnp (pupnp)の修正版が取り込まれました。

リリースノートは以下です。

What’s New
1. Updated OpenSSL to version 1.1.1t to fix multiple security vulnerabilities (CVE-2023-0286, CVE-2023-0215, CVE-2022-4450, CVE-2022-4304).

Fixed Issues
1. Fixed an issue where users couldn't access DSM via the Bonjour service.
2. Fixed stability issue of QuickConnect connections.
3. Fixed an issue where Synology mobile apps remained signed in after users ended all connections following a password change.
4. Fixed an issue of space reclamation not running according to the set schedule.
5. Fixed a display issue concerning the notification about incompatible network interface cards.

日本語に訳すと以下となります。

新着情報
1. 複数のセキュリティ脆弱性 (CVE-2023-0286, CVE-2023-0215, CVE-2022-4450, CVE-2022-4304) を修正するために OpenSSL をバージョン 1.1.1t に更新しました。

修正された問題
1. Bonjourサービス経由でDSMにアクセスできない不具合を修正しました。
2. QuickConnect接続の安定性に関する問題を修正しました。
3. パスワードを変更した後、ユーザーがすべての接続を終了しても、Synology モバイル アプリがログインしたままになる問題を修正しました。
4. スペースの再利用が設定されたスケジュールに従って実行されない問題を修正しました。
5. 互換性のないネットワークインターフェイスカードに関する通知に関する表示の問題を修正しました。

UPnPの問題を修正したとは記載されていません。BonjourサービスはUPnPに似たサービスですが、プロトコル自体は別物なので関係ないと考えられます。

しかし、DSM7をVersion: 7.1.1-42962 Update 3から Version: 7.1.1-42962 Update 5に更新したところ、Synologyのサポートに修正モジュールの再適用をしてもらうことなく、古いDLNAクライアントからもメディアサーバーにアクセスできます。

libupnp (pupnp)ライブラリーの修正版がDSM 7本体に取り込まれたようです。今後のDSMのアップデートの適用では、Synologyのサポートに修正版モジュールの再適用のお願いをしなくてよくなりました。

Synologyさん、libupnp (pupnp)ライブラリーの修正版をDSM 7への取り込んでくれてありがとうございました。


以上、古いDLNAクライアントを利用していても、DiskStationのDSMのアップデートを気軽に適用することができるようになったことに関する投稿でした。

“NAS DiskStationの導入 #23 メディアサーバー(DLNAサーバー) – DSM7にUPnPのパッチが適用される” への2件の返信

  1. 以前本件でお世話になったMNです。
    情報ありがとうございます。
    私もアップデートを行い、DLNAにおいてNAS-C5が認識されることを確認しました。
    いろいろと情報をいただけたおかげで非常に助かりました。
    ありがとうございました。
    我が家のNAS-C5にはまだまだ活躍してもらおうと思います。

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