以前の投稿で、PrecisionやOptiPlexなどのDELLのPCには、互換性のあるメモリモジュールが必要であることが分かりました。最近購入した OptiPlex Tower Plus 7010でも互換性のあるメモリモジュールが必要になりました。しかし、動作実績のあるメモリモジュールは販売終了で新規購入できません。そこで、別のメモリモジュールを検討します。
まずは、前回までの投稿のおさらいから。
DELL Precision 3660 Tower
ソフトウェア開発の用途に、2023年2月に第12世代インテルCore CPUに対応したDELLのミニタワー型のPrecision 3660シリーズを購入しました。
DELL Precision 3660 Towerのベース スペック
Precision 3660のベース スペックの一部(主にメモリの部分)をDELLのホームページから抜粋すると以下の通りです。
機能 | 仕様詳細 |
---|---|
CPU | 第 12 世代インテル® Core (Core™ i9-12900K から Core™ i3-12100) |
チップセット | W680 (DDR5 / DDR4 ECC support) |
メモリ | 4 x DIMM スロット︓ 最大128GB または最大4400MHz ECC および非ECC DDR5 最大速度︓4400MHz 最大容量︓128GB 最大メモリー速度は、各チャネルの次の構成によって異なります。 DIMM 構成が対称でない場合は、最大速度が低下する可能性があります。 4400MHz︓1 DIMM-1R/2R 4000MHz︓2 DIMM-1R 3600MHz︓2 DIMM-2R 8GB、1 x 8GB、DDR5、4400MHz、非ECC 16GB、2 x 8GB、DDR5、4400MHz、非ECC、デュアルチャネル 32GB、2 x 16GB、DDR5、4400MHz、非ECC、デュアルチャネル 64GB、2 x 32GB、DDR5、4400MHz、非ECC、デュアルチャネル 32GB、4 x 8GB、DDR5、4000MHz、非ECC、デュアルチャネル 64GB、4 x 16GB、DDR5、4000MHz、非ECC、デュアルチャネル 128GB、4 x 32GB、DDR5、3600MHz、非ECC、デュアルチャネル 16GB、1 x 16GB、DDR5、4400MHz、ECC 32GB、2 x 16GB、DDR5、4400MHz、ECC、デュアルチャネル 64GB、2 x 32GB、DDR5、4400MHz、ECC、デュアルチャネル 64GB、4 x 16GB、DDR5、4000MHz、ECC、デュアルチャネル 128GB、4 x 32GB、DDR5、3600MHz、ECC、デュアルチャネル |
チップセットはIntel W680です。これはLGA1700に対応する“Alder Lake-S”をベースとしたエントリーワークステーション向けXeonに用いられるチップセットです。Intel Xeon CPU向けとはなっていますが、Intel Core CPUでも使えます。
エントリーワークステーション向けとなっていることもあり、あまりメジャーではない高価なチップセットとなります。コンシューマー向けでは、インテル600シリーズのフラグシップ チップセットは、Intel Z690であるとの認識があります。しかし、Intel W680はさらにその上の仕様を持つチップセットとなります。簡単に行ってしまうと、Intel W680は、Intel Z690に対してECCメモリサポートを追加したものとなります。
チップセットとしてはCPUのオーバークロックやメモリのオーバークロックもIntel Z690と同様に利用できます。ただ、DELLのPrecisionとしては、オーバークロックはサポートしていません。
Precision 3660がサポートしているメモリは、チップセットがIntel W680なので、ECC メモリもサポートしています。最速でDDR5-4400となります。ただし、DDR5-4400は、最速値であり、メモリモジュールのランクやメモリモジュール数によって、DDR5-4400からDDR5-3600までの動作速度となります。DDR5-4400の最速値で稼働できる最大メモリの組み合わせは、32GB x 2の64GBとなります。
メモリ関係以外の仕様の詳細は、前回の投稿を参照してください。
PC購入時は最小メモリサイズである8GB (8GB x 1)で購入して、購入後に64GB(32GB x 2)に差し替えることにしました。
その過程の中で、DELLのPCでは、DELLの基準による要件を満たさないと、互換性のないメモリモジュールとして扱われ、PCが起動しないことがあることが分かりました。
DELLのPCに利用できるメモリモジュール
今までの調査で、DELLのPCに利用できるメモリモジュールは以下の要件を満たすものです。
DELL製パソコンでは、メモリのSPDにXMP情報が含まれている場合、無効なメモリが取り付けられていると判断し、パソコンの起動を止める機能があります。 第11世代インテルCPU以降のDELLのPC(Precision / OptiPlex / Vostro / Inspiron / XPS / Latitude ) に、適合するメモリモジュールは、SPD にXMP情報が入っていないメモリモジュールです。 そのため、DELL製のパソコンにDELL純正でないメモリモジュールを使う場合は、DDR の規格が満たすだけでなく、メモリモジュールのSPDにXMP情報が含まれていないものである必要があります。 CFD のメモリモジュールを使う場合は、CFD Standardシリーズ、または、CFD Panram シリーズのXMP情報が設定されていない製造ロット(2023年3月以降製造)のメモリモジュールを使う必要があります。
ただし、どのメモリであっても購入は自己責任でお願いします。心配なら相性保証・交換保証のある販売店で購入しましょう。CFD のメモリモジュールは、相性保証があるので、どこの販売店の購入であっても安心です。
SPD (Serial Presence Detect)は、メモリの周波数やアクセスタイミングなどに関する情報が収められています。この情報はJEDEC準拠のメモリモジュールであれば、安定動作する情報が適切に書き込まれています。メモリモジュールがオーバークロック駆動に対応したメモリであると、オーバークロック駆動用の情報であるXMP情報やEXPO情報が追加で含まれています。
メモリモジュールに、このオーバークロック駆動用のXMP情報が含まれていると、DELL製PCは、無効なメモリと判断して、PCが起動しません。DELL製PCは、オーバークロック駆動はできないPCなので、この制限は特に問題ありません。
解明に至った経緯は、前回までの投稿(#1, #2)を参照してください。
DELL製PCで互換性のないメモリモジュールに交換してみる
例えば、DELLの基準で互換性のないメモリモジュールにメモリを交換ます。DELLのPrecisionは、電源ケーブルを接続するとメモリなどのセルフチェックが始まります。
しかし、メモリ交換後は、セルフチェックが正常に完了しません。電源ボタンのLEDが、オレンジ色と白色の点滅を繰り返します。念のため、メモリを純正モジュールに戻すと、セルフチェックは正常に完了します。
セルフチェック時の電源ボタンのLEDの点滅のパターンは、エラーコードを表しています。
互換性のないメモリに交換すると、具体的には電源ボタンのLEDがオレンジ色2回、白色5回の点滅を繰り返しています。DELLのPrecision 3660の場合は、PrecisionシリーズのDiag LEDおよびビープ音(2017年~現在)のエラーコード表となります。該当の部分(オレンジ色2回、白色5回の点滅)を抜粋すると以下となります。
状態 | 状態名 | 電源LED: オレンジ色の点滅 | オレンジで点滅のパターン | 問題の説明 | 推奨される処置 |
---|---|---|---|---|---|
S8 | メモリ | 2、5 | オレンジが2度点滅した後で短いとぎれ、白が5度の点滅、長いとぎれの繰り返し | 無効なメモリが取り付けられている | メモリサブシステムの設定アクティビティが進行中。認識されたメモリモジュールは適切だが、互換性がないか構成が無効と思われる。 トラブルシューティングをサポートできる場合は、メモリを装着し直し、問題のないことがわかっているメモリがあればそれと置き換えて、問題を絞り込みます。 問題が解決しない場合は、テクニカルサポートにお問い合わせください。 |
互換性がないメモリが取り付けられていることを表すエラーコードとなります。
このように、メモリモジュールにXMP情報があると、互換性のないメモリモジュールとして判断され、PCが起動しなくなります。
新しいDELL製PC (OptiPlex Tower Plus 7010) を購入
去年のPrecision 3660に続き、今年は新しいDELL製PCを入手しました。DELL OptiPlex Tower Plus 7010 です。使用するメモリモジュールは、DDR5-4400です。このPCは、第13世代インテルCPUの機種なので、前述したメモリモジュールの制限に該当します。
DDR5-4400であれば、前回のPrecision 3660で使用したと同じメモリモジュールを使えば問題ありません。
OptiPlex Tower Plus 7010 の純正メモリ (SK hunix)
まずは、購入時に取り付けられていた純正メモリモジュールを確認します。
OptiPlex Tower Plus 7010 PC本体が届いて、純正メモリを確認すると、メモリモジュールは、SK hynix のメモリチップを使っていました。チップは片面実装で、8GBのメモリモジュール1枚あたり4チップで構成されています。
このメモリモジュールが取り付けられた状態で、BIOS(UEFI)のOverview画面を確認します。
すると、DIMM 1のスロットに8GBのモジュールが認識されており、駆動速度は4400MHz、メモリチャンネルモードはシングルであることが確認できます。
DELL製PCに互換性のあるメモリモジュールが必要となる
新しいDELL製PC (OptiPlex Tower Plus 7010)は、最小のメモリ構成(8GB x 1)で発注しました。到着後、最高速のDDR5-4400で駆動できる最大メモリサイズの組み合わせである 32GB x 2のメモリモジュールに交換する計画です。
PC自体は最大128GBまで対応していますが、128GMBの場合、32GBx4の組み合わせとなり、DDR5-3600での駆動となってしまいます。その為、DDR5-4400で駆動可能な 32GB x 2 の組み合わせで64GBとして利用します。
メモリ増設するため、DELL製PCに互換性のあるメモリモジュールが必要となりました。
CDF のメモリ コンシェルジュ サービスに問い合わせ
相性保証をしているCFD販売株式会社のメモリモジュールが第一候補です。CFD 販売株式会社には、メモリ製品購入前に相談できる問い合わせ先(メモリ コンシェルジュ サービス)があるので、そこに問い合わせます。
DELL OptiPlex Tower Plus 7010 をメモリモジュール交換で 64GB (DDR5 32GB x 2) にアップグレードしたいことを伝え、CDF が取り扱っているメモリモジュールのどれを購入すればよいかを問合せしました。
すると、以下の返事がありました。
XXX 様 この度は、メモリ コンシェルジュ サービスをご利用いただき、 誠にありがとうございます。 お客様の環境について確認させていただきました。 弊社 CFD Selection, CFD Standard、CFD Panramのメモリ製品と DDR5対応のDELL製PCの間で 相性問題のお問い合わせを多数いただいております。 恐らく同様の現象でご利用いただけない状況かと思われます。 ご不明な点がございます際には、 本メールにご返信くださいますよう、 お願い申し上げます。 今後とも弊社製品をご愛顧賜りますよう よろしくお願い申し上げます。 ***************************************************** CFD販売株式会社 メールサポート houjin@cfd.co.jp *****************************************************
メールの返事に記載されているように「CDFで扱っているメモリモジュールでは適合するものがない」とのことです。
過去にCDFのメモリモジュールは仕様変更でXMP情報が削除されました。しかし、XMP 情報が削除されたのは、CFD Standard シリーズとCFD Panram シリーズのメモリモジュールのみで、CFD Selectionシリーズは対象となっていません。
16GB x 2のメモリモジュールは、CDF Standard / Panram シリーズにもあるのですが、32GB x 2 のメモリモジュールは、CDF Selectionシリーズにしかありません。しかし、CDF Selectionシリーズは、XMP 情報が削除されていないので使えません。
この結果から、CDF のメモリモジュールは購入対象から外れました。
Precision 3660で動作実績のあるメモリモジュール
そこで、Precision 3660で動作実績のあるメモリモジュールを、もう一度購入することを検討します
動作実績のあるメモリモジュールは、ArkのARD5-U64G88HB-48B-Dです。しかし、困ったことに、2024年2月時点で販売終了しており、購入ができませんでした。
ARKが取り扱っている互換性がありそうなメモリモジュール
これまでの結果では、
- 相性保証があるCDFのメモリモジュールには使えるものがない
- Precision 3660で動作実績のあるARKのDDR5-4800メモリモジュールは販売終了で購入できない
となり、動作において実績または確実性のあるメモリモジュールは入手できないことになりました。
そこで、ARKが扱っているメモリモジュールの中で、動作しそうなメモリモジュールがないか確認しました。候補に以下の二つがありました。
- SanMax SMD5-U64G88H-56B-D 「SKhynix Edition」
288pin DDR5-5600 CL46 64GB(32GBx2枚組) 1.1Volt JEDEC/SPD - ARK ARD5-U64G88SB-56B-D「Samsung Edition」
288pin DDR5-5600 CL46 64GB(32GBx2枚組) 1.1Volt JEDEC/SPD
ARKの扱っているメモリモジュールは、SPD / XMP / EXPO の情報がWEBサイトに記載されています。上記の二つは、XMP 情報もEXPO 情報も含んでいません。なので、DELL製PCでも利用できる可能性が大きいです。
なお、上記のメモリモジュールのメモリ規格は、DDR5-5600です。
OptiPlex Tower Plus 7010 は、動作可能なメモリ規格の上限は、DDR5-4400です。Precision 3660でも、動作可能なメモリ規格の上限は、同じDDR5-4400です。
JEDEC準拠のDDR5のメモリモジュールは、上位規格のメモリモジュールは下位規格の仕様でも動作します。そのため、PC側がDDR5-4400であっても、DDR5-5600のメモリモジュールを使って動作可能です。
どちらのメモリモジュールもXPM情報が含まれていないので、DELL製PC上で利用可能と思われます。
Precision 3660 で動作実績のあるメモリモジュールにはSK hynix 製のメモリチップが使用されていました。そのため、今回もSK hynix 製のメモリチップが使われている
SanMax SMD5-U64G88H-56B-D 「SKhynix Edition」
を試してみることにします。
SanMax SMD5-U64G88H-56B-D 「SKhynix Edition」
SanMax SMD5-U64G88H-56B-D 「SKhynix Edition」を実際に入手しました。外観は、黒い箱です。
製品保証期間は5年間です。32GBのメモリモジュールが2枚で構成され64GBです。
上記の写真は、メモリモジュールの表と裏を写したものです。一つのメモリモジュールは、両面実装で、16個のDRAMメモリチップで構成されています。2GB (16Gビット) のDRAMメモリチップが使わていることになります。メモリモジュールの中央部は、電源管理ICやSPD Hubなどの部品です。
DELL製PCでは、このSPDに書かれている情報が重要で、XMP情報などが付加されていると、互換性のないメモリとして判断されます。
今回の投稿は、DELL OptiPlex Tower Plus 7010でメモリ増設の検討についての報告でした。次回は、実際に購入したメモリモジュールで動作確認をしてみます。
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