APCの電源タップ

2021年の12月にAPCのUPS (無停電電源装置)を追加購入しました。UPSと電源タップのセット販売だったので、APCの電源タップも付いてきました。今回の投稿は、このAPCの電源タップについてです。

APC (正式は “APC by シュナイダー エレクトリック” )はシュナイダーエレクトリック(Schneider Electric)の無停電電源装置のブランド名であり、この会社は無停電電源装置の代表的な製造企業です。APCのUPSは今までも何台か利用しており、無停電電源装置としては定番の中の一つです。

今回、APCのUPSを購入したときに、APCの電源タップもセットについてきました。しかし、APCが電源タップを作っていたとは知らなかったので、物珍しさがありました。

APC SurgeArrest (APCの電源タップ PE66NW-JP)

今回のAPCの電源タップの型番は、PE66NW-JPです。まずは製品の箱の外観から。

APC SurgeArrest 箱(表)
APC SurgeArrest 箱(裏)

APCの電源タップは、SurgeArrestというシリーズ名がついているようです。Surgeはサージ電圧(電圧の急激な変化)、Arrestは阻む、なので、サージ電圧からの保護を目的とした商品のようです。実際に、製品の外箱にも、特徴としてサージ保護、入力ノイズフィルターと記載されています。

また、1Gbpsネットワークサージ保護とも記載されており、タップの下部はRJ-45端子が二つあります。ネットワークケーブル経由で侵入するサージ電圧の保護機能もあるようです。

サージ電圧の保護機能ですが、1080ジュール(1080J)と書いてあるので、その電力量まで保護が可能なようです。サージ電圧が1秒間続くときは、1080W相当の保護となり保護容量が少なく見えます。しかし、サージ電圧の継続期間は、落雷に起因するものは10μ秒程度、スイッチの開閉に起因するものは10m秒程度であるため、それぞれ100MW、100kW相当の保護となるのでしょうか。

次に製品の外観です。

白色をベースとした製品となります。コンセントをまとめてOn/Offするスイッチ、6口コンセント、ネットワーク端子が2個あります。

裏面は、フック取り付け用の穴はありますが、金属面に取り付けるための磁石はありません。私はほとんどの場合、磁石で取り付けるので、磁石がないのは残念です。

カタカタ音がする

このAPCの電源タップですが、製品の箱の状態のときから、少し異常がありました。

箱を上下に反転して動かすと、カタカタ音がするのです。当初は、箱の付属品の音かと思いました。しかし、箱から製品を出して、製品のみを上下に反転して動してもカタカタ音がします。製品の内部で何かの物体が移動して、カタカタ音がしているようです。

さすがに、電源タップでこのような音がするのは怖くて利用できません。なぜなら、使用中にその物体の影響で内部でショートしてブレーカーが落ちるということになりかねないからです。

今回は、外れを引いてしまったようです。APCの製造ラインでは、部品が混入にしていないかのチェックをしていないのかなぁ。

カタカタ音の原因を探る

カタカタ音の原因が気になり、この電源タップを分解して確かめることにしました。

6本のネジでともられているだけなので、すぐに内部を確認できると思っていました。しかし、実際にネジを外そうとすると、ネジの頭の形状が変です。6本のネジのうち3本のネジの頭の形が、普通のプラスネジとは異なります。

写真の上側のネジが形状が特殊なネジです。

調べてみると、このネジはワンサイドネジといわれ、絞めるときは通常のマイナスドライバーで可能ですが、外すには専用の特殊ドライバーが必要です。

ならばと、専用の特殊ドライバーを入手しようとしました。

TRUSCO(トラスコ) いたずら防止ねじ用リムーバルツール ワンサイド 適応M3、M4兼用 B1770410

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でも、このワンサイドネジ用の特殊ドライバーは、高いのですね。メーカー希望小売価格¥9,500 (税抜)となっています。原因を探るためだけの為にこれは高いです。

Amazonアウトレットで入手した特殊ドライバー

ところが、Amazonには、2021年末にこの商品のアウトレット品があり、2,500円程度で購入できました。特殊ドライバーとして、利用できればアウトレット品であっても問題ありません。タイミングがよかったです。

TRUSCO いたずら防止ねじ用リムーバルツール ワンサイド 適応M3/M4兼用
TRUSCO いたずら防止ねじ用リムーバルツール ワンサイド 適応M3/M4兼用(先端拡大図)

ワンサイドネジ用ドライバーを入手して確認してみると、先端が特殊でした。2本の棒が突き出したような形状です。

さて、実際にワンサイドネジを外してみようとします。

ネジ穴より太い特殊ドライバーの軸

ところが、この電源タップでは、ワンサイドネジがネジ穴に埋まった形をしており、その穴の径が6mmです。しかし、特殊ドライバーの軸の太さが8mmでした。サイズが合わない。

実際に使われているワンサイドネジは、M3なので、この特殊ドライバーで適合しています。ただ、ネジが穴の中に納まっていることは、この特殊ドライバーでは想定していなかったようです。

せっかく手に入れた特殊ドライバーが無駄になりました。

ワンサイドネジをマイナスドライバーで外す

こうなれば力ずくで外します。ワンサイドネジがマイナスドライバーで外せない仕様のネジだとしても、ドライバーの先端が、少しでもネジの頭に引っ掛かりでもすれば、ワンサイドネジが外せるのではないかと。

取り外したワンサイドネジ

はい、マイナスドライバーで外すことができました。ワンサイドネジを止めている相手がプラスチックであるため、締め付け力が弱く、ちょっとした引っ掛かりでも、ネジを外すことができました。

分解

通常のプラスネジ3個、特殊ネジであるワンサイドネジ3個を取り外すと電源タップを分解できました。

分解した写真は以下の通りです。左側がネットワーク端子のサージ保護回路、中央が6口のコンセント、右側が電源スイッチとサージ保護回路です。

APCの電源タップ分解図

カタカタ音の原因もわかりました。上の写真でネットワーク端子のサージ保護回路と6口コンセントの間に、小さな銀色の物体があるのがわかります。これが、カタカタ音の原因でした。

拡大したのが下の写真です。

カタカタ音の原因

溶けた半田が固まったものでした。それなりの大きさがあります。もし、この大きさの半田屑が基板上に移動したなら、基板上の隣り合う端子をショートさせてしまう危険性があります。

カタカタ音を無視して、この電源タップを通常利用しなくてよかったです。

電源タップを分解したついでに、基板もチェックしてみます。

ネットワーク端子のサージ保護回路

ネットワーク端子のサージ保護回路は、電源回路とは電気的な接続はなく、完全に独立しています。

ネットワーク端子のサージ保護回路(裏面)

保護回路の裏面を見る限り、二つのネットワークコネクターのそれぞれの端子を単純に接続したようなシンプルな構成です。途中に異なる二つの端子間の配線で、電磁的に相互作用させたような配線パターンも見られます。

サージ保護回路としては、基板の周囲を一周している配線パターンが共通線となっており、各端子をサージ保護部品でその共通線につなぐようになっているようです。

次に、サージ保護回路基板の表面を確認します。

ネットワーク端子のサージ保護回路(表面)

ネットワークコネクタにある8個の端子に対応する、8個の部品があります。この2R150と記載された部品が、サージ電圧をクリップする部品であり、 ガス入り放電管(GDT)のようです。

ガス入り放電管(GDT)は、ガスアレスタ、サージアレスター、避雷器、サージアブソーバーとも呼ばれているサージ対策のための電子部品です。

ガス入り放電管(GDT)とは、誘導雷などによって瞬間的に発生する異常電圧(サージ)から、電化製品や産業用の制御のための電子機器を保護するための部品です。主に電源ラインや通信ラインから侵入するサージを回路の入口にガス入り放電管(GDT)などの対策部品を接続することにより、異常な高電圧のみ接地側にパスさせ、回路側の部品を保護します。

また、部品の表記に2R150とあるので、直流放電開始電圧は150Vのようです。

電源のサージ保護回路

6口コンセントの電源回路は、ブレーカを兼ねた電源スイッチ、サージ保護回路、温度センサー、ノイズフィルターの構成のようです。

コンセント端子のサージ保護回路

今回の電源タップの曲者

今回のAPCの電源タップで、カタカタ音の原因は半田屑でした。また、音の原因を確認するために分解で苦戦したのは、ワンサイドネジが使われていたことでした。

てこずったワンサイドネジとカタカタ音の原因

カタカタ音の原因を取り除かずに、ショートの可能性があった電源タップを使わなくてよかったです。

最終的に電源タップはもう一度組み立てました。

ただし、組み立てる前に、基板上の各所を確認し、半田付けが中途半端な状態になっていないことを確認しました。

そして、半田屑を取り除いて、3本のワンサイドネジは通常のプラスネジに変更して、電源タップを再組立てしました。

これで、この電源タップは、普通に使える状態にできました。

なお、電源タップの裏に磁石がないため、スチール製の台などに取り付けれない問題は、下記の部品を使うことにより解決しました。

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今回の投稿では、APCの電源タップのカタカタ音の原因について調べたことについてでした。

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